『子どもの学び』遊びの技
「ねえ、ぼくにものぼらせてよ」4歳児の子がお願いしています。園にあるタワーは私たち職員の手作りですが、2階に登るには安全のため、
自分の力で登れる力を持った子が遊べる特別なエリアです。近くに台などの足場を持ってくるのは、危険なので禁止しています。
それでも、少しだけ登る補助をするため、一本の柱にロープを巻き付けて、足が掛けられるようにしてありました。
ところが、4月に見た時には柱のロープはなく、写真のように2本の柱を一緒にして輪を作って結んであったのです。
私はこのようなロープの使い方に初めて気づいたので、危険がないか見ていたのですが、柱の下が広いため、ゆるく輪を作るだけで、階段のように登りおりしていました。
「(紐)とれちゃった」と言う声で上にいた子が「まって、いま降りるから」と言って、Sちゃんが下に降りてきました。そして、なんども挑戦しながら結ぼうとしたのですが結べず、「う〜ん、Aちゃんじゃないと無理」と言いました。
すると今度はAちゃんに向かって「ねえ、むすんでよ〜」と頼みました。ところが、Aちゃんは上でままごとに夢中で手が離せません。おたがいの都合がかみ合わず、待たされてその子はあきらめてどこかへ行ってしまいました。
しばらくして降りてきたAちゃんは、友だちのお願いはしっかり耳に入っていたようで、すぐにロープのところへ行きました。そして、いとも簡単に結びました。
その時、先程結べなかったSちゃんが、Aちゃんのそばに近づき、近くでとても真剣な眼差を向けていました。きっとSちゃんは先程のプロセスの中で、自分でも結べるようになりたいという気持ちになったのでしょう。
このような人との関わりを通して、主体的な学び方を体験することが保育園における大切な学びの時間です。面白そうなものを見つけ、自分から見てまねる学び方が、子どもには一番合っている学習方法です。
後で、あまりにも巧みなロープの使い方だったので、これらの様子を保育者たちに話し、いつ頃からこのようなロープの使い方をしているのかを聞いて見ました。すると、どうやらこの春卒園した子どもたちがやっていたようなのです。そうなると、その時からの遊びの伝承が、異年齢の中ですすんでいたということになります。
このような子ども同士の学び合いが発生するには、子どもたちが遊びこむ時間と学び合う仲間、冒険の出来る環境などが必要です。大人が上から教えてしまうというやり方もありますが、本物の体験となるには、このような学び合う環境が必要なのです。今月は交流会や親子クッキングがありますが、その時も、子どもたちは大人同士の人間関係も学んでいくはずです。子どもが真似したくなるような、楽しい交流の場になるように、一緒に楽しみたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。